狂気に満ちた白夜の祝祭 映画「ミッドサマー」あらすじ ネタバレあり感想 考察
今回ご紹介するのは、2019年にアメリカで公開されたホラー映画「ミッドサマー」です。
公開初週から700万ドル近くの興行収入を誇り、また評論家からも非常に高い評価を集めたことで注目を浴びた本作。
「画面は明るいのに怖い」という不思議な体験ができる映画として、人々の話題を集めました。
では、早速その新体験の怖さへと迫っていきましょう。
「ミッドサマー」
引用元:Yahoo!映画
2019年 アメリカ、スウェーデン
原題:『Midsommar』
監督:アリ・アスター
出演:フローレンス・ピュー
ジャック・レイナー 他
映画「ミッドサマー」あらすじ
とある事故で両親と妹を失いトラウマを負った大学生ダニー(フローレンス・ピュー)は、自らの存在が恋人であるクリスチャン(ジャック・レイナー)の負担となってはいないかと思い悩んでいた。またクリスチャンも、気の毒なダニーを慰めつつも、内心彼女のことを少し重荷に感じていた。
そんな折、ダニーはクリスチャンの友人であるスウェーデンからの留学生ペレの誘いによって、クリスチャンとその友人マーク、ジョシュとともにペレの故郷である田舎町ホルガを訪れることとなる。
ホルガでは90年に1度の祝祭、夏至祭が開催されており、一行はその幻想的な光景と明るく美しい村人たちに魅了されるが...
映画「ミッドサマー」感想、見どころ (ネタバレ注意)
山奥の秘境を描いた映像美
本作でダニーらが訪れることになるスウェーデン奥地の村、ホルガですが、そこには色とりどりの花が咲き乱れ、緑があふれる美しい光景が広がっています。この明るくカラフルな美しさを、この映画では冒頭からラストまでたっぷりと楽しむことができるのです。白夜なので暗くならないし。
この映画、主な撮影地はスウェーデンではなくハンガリーのブダペストであったようですが、実際にこのような場所があるのならぜひ一度行ってみたいという気持ちに駆られました。まあ、ホラー要素を抜きにしてみれば、の話ではありますが。
この映画のみそは、最初はあれだけ美しく感じたこの風景が、ラストにはもう見たくないと思わされるようなその構成にあります。
夏至祭、ただのお祭りじゃないやんけ!
まあ、当然といえば当然ですが、ホルガで開催されていた90年に一度の祝祭は、一般的に私たちが想像する普通の祭りとは異なるものでした。最初は祭りを楽しんでいた一行も、ある場面をきっかけにここで行われていることの異常性(彼らの文化から見た場合の話ですが)に気づき始めます。その場面とは、ホルガの一員で72歳に到達した男女の老人が、「既に生きるべき期間は終えた」という理由で村人に見守られながら崖から飛び降り、自ら命を絶つシーンでした。
このシーンは、見ている側としても非常に衝撃的でした。具体的にこの村の何がおかしいのか?ということが明かされないままいたところに突如このシーンを見せつけられることで、この村の文化の「異質性」に一気に引き込まれます。
作中の人物たちと同時に、これからこの村で起こる出来事を受け入れる準備を強制的にさせられます。覚悟しとけよと。
結局ダニーは幸せになれたのか
で、その後村では様々な出来事が起こり、村を訪れた者たちは一人、また一人と犠牲になっていくのですが、最終的に、ダニーはこの村に「適応」し、村の女王である「May Queen」となります。そして彼女は儀式の生贄としてクリスチャンを焼き殺すことでこの物語は完結を迎えます。
この映画、このダニーが家族の死の悲しみとクリスチャンへの依存から抜け出してホルガの共同体の一部となる過程を「ダニーの失恋と解放の物語」ととらえる見方が一般的らしいのですが、どうなのでしょうか。確かに、家族を失いクリスチャンという依存先がなければ生きられなかったダニーが、彼を自ら捨て去ることで新たなステージへと進むことができた、という明るいお話だとも言えるかとは思います。でも正直、ダニーは依存先を変えたにすぎず、たまたまその依存先もダニーを欲していた、というだけの話な気もしませんか?
むしろその依存先の特質上、今後のダニーに待ち受ける人生が幸せなものになるとは、少なくとも私の視点からは思えませんでした。結びつきが強い分、もう簡単には抜け出せないでしょうしね...
まとめ
いかがでしたでしょうか、スウェーデンの秘境で謎の祝祭に巻き込まれる大学生たちを描いた映画「ミッドサマー」
今回はあまりご紹介できませんでしたが、この映画、グロテスクな描写もふんだんに盛り込まれており、そういった要素を期待してホラーを見る方も十分楽しめる作品となっております。
また、作中たびたび登場する壁画やギリシャ神話に関連したルーン文字の存在など、より深く考察して楽しむこともできる作品となっているので、そちらが気になった方は是非そういった方面でも調べてみてください。
上映時間は少し長めとなっていますが、飽きることなく楽しめる一本だと思います。