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映画「パラサイト 半地下の家族」あらすじ 感想 レビュー 寄生して生きてゆく一家

今回ご紹介するのは、2019年に韓国で製作された映画「パラサイト 半地下の家族」です。

第92回アカデミー賞では4部門を受賞し、大きな話題となった本作。韓国の裕福な家庭と、そこに目を付けた「半地下」住まいのもう一つの家族の交錯を、予測不可能な展開を織り交ぜつつユーモラスに、時にはシリアスに描いていきます。

韓国の現実が題材となっているとも言えるこの映画、何がこんなにも観客の心を掴み、大ヒットへと繋がったのでしょうか。早速見ていきたいと思います。

「パラサイト 半地下の家族」

 f:id:mamamatutu:20200603193520j:plain 引用元:映画.com

 2019年 韓国

原題:「기생충」

監督: ポン・ジュノ

出演: ソン・ガンホ
            イ・ソンギュン
            チョ・ヨジョン
            チェ・ウシク
            パク・ソダム

映画「パラサイト 半地下の家族」あらすじ

半地下住宅に住むキム一家は貧困にあえいでおり、低賃金の内職によって毎日食いつないでいるという状況だった。

そんな中、ある日息子のギウ(チェ・ウシク)は、友人であり名門大学に通う青年ミニョクから、彼の代理として家庭教師の仕事を紹介される。高い報酬につられてこれを引き受けたギウは、大学生と身分を偽り、高台に住む裕福なパク一家の娘、ダヘの家庭教師となった。さらにパク夫人(チョ・ヨジョン)が息子ダソンの絵の家庭教師を探しているということを知ったギウは、妹のギジョン(パク・ソダム)を、知り合いとしてダソンの絵の家庭教師につけることに成功する。その後も、父ギテク(ソン・ガンホ)はパク一家の運転手として、母チュンスクは家政婦として雇われることに成功する。

こうしてキム一家は家族揃って裕福なパク一家に「寄生」することとなるのだったが...

映画「パラサイト 半地下の家族」感想、見どころ(ネタバレ注意)

「半地下」って?

無事に家族としての繋がりを隠しつつ就職することに成功したキム一家。順調に思えた彼らのパラサイト計画でしたが、そこに一つ想定外の事態が起こります。ひょんなことからパク家の邸宅には地下室が存在することが判明し、その中では一人の男が暮らしていたのでした。その男の名はグンセと言い、この男もまたパク一家に気づかれることなく、ずっと昔から「寄生」して生きてきていたのです。そんな彼と彼の妻、ムングァンに家族であることを気取られた一家は、そのことを脅しに使われ、順調と思われた寄生生活が一転、ピンチを迎えてしまいます。

キム一家が暮らす「半地下」ですが、これは文字通り地上と地下の間に建てられた家のことで、部屋の半分が地上に露出する形になっています。もとは有事の際の避難場所として設計されたものでしたが、近年の急激な人口増大に伴い、こうした半地下住宅に住む人の数は増加してきました。「半地下」は高湿度で衛生状態も悪く、ともすれば貧困層の象徴とされる存在でもあります。そんな場所に住むキム一家の経済状況の悪さを表しているというわけです。

そしてさらにこの映画には半地下よりもさらに下、地下に住む男が登場します。この男の生活状況は非常に悪く、それこそ半地下に住むキム一家以上といえるでしょう。つまりこの映画では、高台に住む超裕福なパク一家、半地下に住む貧困のキム一家、そしてさらに深く地下に住む男グンセと、その社会的階層が可視化されているわけです。

社会において現実に経済的格差が存在することは誰もがわかってはいますが、こんなにもあからさまにそれが表現されているというのは、この映画で注目すべき点の一つと言えそうです。

「臭い」と殺人

この映画にたびたび登場するキーワードとして「臭い(におい)」というものがあります。

無事に正体を隠しパク一家へと潜入したキム一家でしたが、パク一家の人々は、ことあるごとにキム一家に染み付いた「半地下の臭い」に言及します。なぜかはわからないが貧困の臭いがする、と。この言葉に対し、特に父ギテクは過剰に反応しているようでした。

そんな折、パク家の邸宅で大勢を招いてパーティーが開催されることとなります。キム一家の面々も関係者としてそれぞれこのパーティーに参加することに。ところが、このパーティー中に事件は起こります。地下に住む男グンセが、包丁を手に持って現れるのです。グンセに娘ギジョンは殺されてしまいます。その後チュンスクによってグンセは止められますが、この時、パク氏がグンセに対し、例の「臭い」がすると言ったのを聞いたギテクは、パク氏を刺し殺してしまうのでした。

この「臭い」に関してですが、最後にパク氏が言及したのはギテクに対してではなかったのにも関わらず、彼の怒りが爆発したというのが印象的でした。

「半地下」に暮らしながらも、そのことを馬鹿にされ、蔑まれることに怒れたギテクは、心の奥底ではまだ人間としてのプライドを高く持っていたのかもしれません。

画面に現れるユーモア

ここまでの説明の感じだと、本作は韓国の超格差社会を描いたシリアスな映画、しかも人も死ぬし... と思われがちだと思いますが、本作は決してそっち方面一辺倒というわけではありません。

ところどころに「笑いどころ」が盛り込まれており、そういった面でも観客に配慮されています。

この笑えるシーンを映画全体の中で見たときにどう捉えるかは個人次第だと思いますが、どれも完成度が高く、しっかり「ここだよ」とわからせてくれる作りになっているので、是非そこにも注目してみて欲しいと思います。

まとめ

いかがでしたでしょうか、韓国の現実と、そこで生活する二組の家族の交錯をユーモラスかつシリアスに描いた映画「パラサイト 半地下の家族」

数多くの賞で評価されているだけあって、映画としての完成度はものすごく高いなといった印象を受けました。

同監督の作品として「スノーピアサー」という映画がありますが、そこでも描かれていた格差社会というテーマを、より抽象的に、かつより鮮烈に描いているのがこの作品と言えるでしょう。

また、そんな現実への問題提起的な内容を扱っていながら、そうした難しいことを考えずとも楽しめるのがこの映画の素晴らしい点のように思います。

ぜひ一度、観てみてはいかがでしょうか。

個人的おすすめ度 ★★★★☆

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